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生涯を添い遂げるマグ 生涯を添い遂げるマグ

MUG. hand made by pottery craftsman

Craftsman #15
一穂窯
多田健太
香川県丸亀市

CRAFTSMAN:
Kenta Tada

POTTERY:
ichihogama

LOCATION:
Kagawa, Marugame City

photo photo

焼きものの産地がないからこそ
自由な発想で陶芸に取り組む

幼少期の陶芸教室の記憶
香川県丸亀市の住宅街の一角に、「一穂窯」の工房兼ショールームはあります。代表を務める陶芸家・多田健太さんは同市の出身で、地域に根差しながら、独自の作風を追求しています。
多田さんと陶芸の最初の接点は、母親が運営していた陶芸教室でした。
「子どもの頃、生徒さんたちが楽しそうにワイワイと作陶する様子を見るのが好きでした」
一穂窯の工房の全景。陶芸教室もこちらで開講されます

多田健太さんの両親。幼少期に見た、母・里美さんが運営する陶芸教室の楽しそうな情景。その記憶が、陶芸家の道へ進むきっかけの一つとなりました

テニスから陶芸へ

中学・高校では、硬式テニスに打ち込みました。
高校は岡山県の高校に進学し、寮生活を送りながら、部活動に励みました。美術とは無縁に思える青春時代でしたが、母親の陶芸教室が軌道に乗り始めたこともあり、高校3年生の夏のインターハイ後に進路を切り替え、デッサンを学びます。
短期間で基礎を身につけて、倉敷芸術科学大学へ進学し、本格的に陶芸の道へ進みました。

大学では、「練り上げ」と呼ばれる技法を探求しました。色の異なる粘土を組み合わせて模様を生み出す練り上げは、計画性と高度な技術を要します。
また、作品について言葉で語る討論の場も多く、表現を理論的に捉える姿勢も養われました。


一穂窯の代表の多田健太さん。後ろにずらりと並ぶのは、釉薬の数々。練り上げの繊細な模様を引き立てるために、多彩な釉薬の研究も欠かせません

民藝の思想との出会い

大学を卒業後は、香川大学大学院へ進学し、倉石文雄教授のもとで学びます。
ここで民藝の思想に触れ、芸術品としての一点物ではなく、日常使いのうつわ、いわゆる「数物」をつくる重要性を学びました。

大学院を修了後は、いったん四国新聞社に就職しますが、会社から依頼された記念品の製作をきっかけに、自身のうつわが人に喜ばれる実感を得ます。
その体験が背中を押し、26歳のときに一穂窯を設立しました。

以来、丸亀の地で、作陶と陶芸教室の運営を続けています。


技法と作風

多田さんの作品の特徴としては、表情の豊かさが挙げられます。技法としては、色の異なる粘土を組み合わせる「練り上げ」と、あえてヒビを生じさせる焼成の技法「貫入」を得意としています。

写真/練り上げの技法でつくられた食器

さらに、うつわの表面をヘラやカンナで削ぎ落とすことで、直線的なラインや凹凸(稜線)を表現する「ソギ」という技法を駆使し、手仕事の揺らぎを作品に刻んでいるのです。

「使いやすいけれど、デザイン的にも良いもの、特別な日に使いたくなるようなうつわをつくっていきたいと思っています」

写真/ソギの工程

植木鉢のブランド「ICHIHOPOT」

現在、一穂窯の活動の柱の一つになっているのが、植木鉢のブランド「ICHIHOPOT」です。一点一点、表情が異なり、植木鉢としても個性的でありながらも、塊根、灌木、多肉など、どのような植物でも存在を際立たせます。

「コロナで観葉植物の需要が上がったので、塊根植物用の鉢をメインでつくるブランドを立ち上げました」

自身が運営するネットショップを中心に、百貨店やホームセンターへの卸も行ってきたとのこと。植物の市場が落ち着いた今、ブランド力の強化が課題と感じているそうです。


植木鉢のブランド「ICHIHOPOT」。表面はソギの技法で仕上げられています

Wired beans「生涯を添い遂げるマグ」との取り組み

Wired beansとの取り組みについて、お聞きしました。

「もともと、数物をつくる作家ではないので、不安はあります。ふだんはミリ単位で揃える製作をしていないため、その点は課題ですね」

しかし、多くの窯元が苦戦する取っ手については、それほど苦労していないそう。ただ、「(本体と取っ手の)境目の処理は、もっと勉強しないといけない」と前向きに捉えています。

手仕事の個体差を活かしながらも、製品としての精度をどう確保するかを模索している段階です。


産地不在という環境のなかで

香川といえば、独特の装飾で知られる「香川漆器」が有名ですが、愛媛の「砥部焼」のような陶磁器の産地はありません。そうした状況において、どのような心持ちで作陶に取り組んでいるのでしょうか。

「産地がないので、ここで陶器を買おうという意識は強くないかもしれません。ただ、伸び伸びはさせてもらえるのかな、とは思っています」

この自由な環境のなかで、自身の技法と地域性をどう結びつけるか。一穂窯の歩みは、丸亀から新たな陶芸の可能性を模索する挑戦の連続です。

一穂窯
Ichihogama
住所

〒763-0093 香川県丸亀市郡家町622-2

TEL

0877-85-3660

WEB

https://ichiho.info

生涯を添い遂げるマグ 一穂窯

香川県丸亀市の一穂窯・多田健太氏が手がけるマグ。得意とする技法「練り上げ」や釉薬研究を活かし、美しい輝きの「ガラス釉」、温かみある「黄瀬戸(きせと)」、爽やかで奥行きのある水色の「辰砂(しんしゃ)」を展開。手しごとの揺らぎが日常から特別な日まで彩る器です。

取材・執筆
萩原 健太郎

ライター。フォトグラファー。
東京・大阪を拠点に、北欧、デザイン、インテリア、手仕事などの領域の執筆・撮影、講演、プロデュースを中心に活動。

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