CRAFTSMAN:
Seigan Yamane
CATEGORY:
Hagi Yaki
POTTERY:
Kousaian
LOCATION:
Yamaguchi, Hagi City
CRAFTSMAN:
Seigan Yamane
CATEGORY:
Hagi Yaki
POTTERY:
Kousaian
LOCATION:
Yamaguchi, Hagi City
陶芸の道へ進むきっかけは、友人の勧めでした。30歳を過ぎた頃、知り合いの陶芸家である栖曇窯の都野栖曇さんのアドバイスを受けながら、本業のかたわら、独学で陶芸の道を歩み始めます。
ある日、「どうしたら上手になれますか?」と尋ねると、返ってきたのはこんな言葉でした。
「難しいことを考えんでいいから、1日4時間、ろくろの前に座っとけ」
この助言を愚直に実践することで、技術が次第に身体に染み込んでいきました。土に触れる時間の積み重ねこそが、現在の製作の基盤となっています。
萩焼は茶陶として知られていますが、当時の山根さんにはそんな余裕はありませんでした。
「もう茶陶どころじゃない。とにかくこれで飯が食えたらいい」
その切実な思いで作陶に向き合ううちに、みるみる腕を上げ、作品は早い段階から売れ始めます。しかし、都野さんの評価は少し違いました。
「上手くなったけど、下手な頃の勢いはなくなったね」
この言葉に、「ちょっと参った」と山根さんは振り返ります。上達することで、かえって魅力が薄れることもある──陶芸の奥深さを物語るエピソードです。
その言葉を胸に、光彩庵を開き、2007年に現在の地に窯を築きました。
山根さんの代表的な表現である、鮮やかで深みのある青「清玩ブルー」は、偶然の産物として生まれました。
「白をつくろうと思ったら、ブルーになったんよ。最初は『なんでこうなるんや』って感じでしたね」
本来目指していた白ではなく、予期せぬ青。しかし、その結果を否定するのではなく、そこに可能性を見出し、試験を重ねて再現性を高めていきます。偶然を起点にしながらも、それを技術として定着させていく。このプロセスは、山根さんの創作の本質をよく表しています。
「釉薬が一番おもしろいですね。焼いてみないとわからんところがあるから」
代名詞の清玩ブルーに限らず、光彩庵の作品は、釉薬による豊かな表現が特徴です。
荒い砂を多く含んだ土を用い、豪快でざらついた質感に仕上げた作風は「鬼萩」と呼ばれます。白と黒のコントラストが強い緊張感を生み出しますが、わずかな温度差で質感や艶が変わるため、焼成時の微調整が欠かせません。
萩焼の代表的な釉薬である「白萩」は、藁灰を原料とし、雪のような白や淡い青みを帯びた白が特徴です。なかでも、萩焼の人間国宝・三輪休雪による「休雪白」は広く知られ、山根さんにとっても究極の目標の一つだといいます。釉薬の表面に貫入が入り、使い込むほどに茶が染み込み、色合いが変化していく「萩の七化け」も大きな魅力です。
また、赤土の素地に白釉(藁灰釉など)を重ね、溶けて流れる景色を楽しむ「なだれ萩」にも取り組んでいます。
地元の藁や木灰から釉薬をつくり、酸化焼成と還元焼成を使い分けながら、偶然性を受け止めつつ、多層的な色彩と質感を引き出しています。
山根さんの創作の核にあるのが、「勢い」です。
「作為を排して、勢いでいく」
陶芸を始めた頃に指摘された、技術が向上するほど、整い過ぎてしまうことへの反省から、あえてスピードを重視した作陶を行っています。
ぐい呑みを数十秒で成形するなど、身体のリズムに委ねた製作は、作品に独特の生命感を与えます。計算された美しさではなく、瞬間の判断の積み重ねが、うつわの魅力を引き出しているのです。
アーティストを地で行くような山根さんですが、Wired beansとのプロジェクトにも参加しています。一点ものとは異なるアプローチを楽しんでいるようです。
「こういうのは一人じゃできんからね」
量と品質を両立させるため、工程の一部を分業化し、チームでの製作体制を整えています。山根さんの感覚を反映させながら、安定した品質を実現するための工夫が重ねられています。
日常使いのプロダクトであるからこそ、耐久性や再現性も求められます。個々の表現を保ちながら、製品としての完成度を高めていくこの取り組みは、伝統工芸の新たな可能性を示しています。
「売れることはいいことよね。リピーターの人が来るからね」
作品は人に使われてこそ意味を持つ──その考えのもと、すべてのうつわに真摯に向き合っています。
〒759-3611 山口県萩市大井3437-3
0838-28-0277

山根清玩氏による「鬼萩」のマグ。
荒土の力強い質感に、厚くかかった白萩釉が割れ、縮れることで生まれる「カイラギ」の表情が魅力です。
貫入や素地にコーヒー等がゆっくり染み込み、器が育つ「萩の七化け」を愉しめる、存在感溢れる逸品です。
続けることは難しい
光彩庵では現在、後継者の育成も課題となっています。家族内での継承にこだわらず、外部からの志願者も受け入れています。
「この世界は免許も何もいらないからね。やりたい人がやればいい」
誰にでも開かれた世界だからこそ、その分、続けることの難しさもあります。
「続けるのが一番大変ですけどね」
その言葉には、長年つくり続けてきた実感がにじんでいます。