CRAFTMAN:
Sandai Kousai Yamane
CATEGORY:
Miyajimaosuna Yaki
POTTERY:
Taigendo
LOCATION:
Hiroshima, Hatsukaichi City


CRAFTMAN:
Sandai Kousai Yamane
CATEGORY:
Miyajimaosuna Yaki
POTTERY:
Taigendo
LOCATION:
Hiroshima, Hatsukaichi City
「宮島御砂焼は、粘土に御砂を練り込み制作する素朴な焼き物です。現在続いている宮島御砂焼は、大正元年頃に宮島の対岸で再興しました。以前は宮島島内にあり、何度も途絶えた御砂焼で、当時はお土産を主に制作していたと考えられます。先代と私自身も、現存する御砂焼から感じられる素朴な自然観や、昔の旅人から始まった御砂を拝受できることへの感謝の気持ち、そして厳島神社から拝受した御砂を練り込んで制作する伝統は代々変わらず、心に刻みながらも表現方法は変わってきています。対厳堂の御砂は神職様にご準備、ご祈祷いただいています。お客様にとっては縁起物であり、私たち作り手にとってはありがたい御砂です。御砂を粘土に練り込む時は最も気持ちが引き締まります」
対厳堂は、JR宮島口駅から徒歩2〜3分の距離、宮島の対岸に位置し、道路沿いに店舗と工房があります。
余談ですが、映画『ミステリと言う勿れ』のロケ地にも選ばれました。創業から100年以上ほとんど変わらないろくろ場や煉瓦造りの煙突に、「この雰囲気はセットではつくれない」と監督が惚れ込んだのが決め手だったといいます。昨今、映画や漫画などの撮影地を巡る「聖地巡礼」がブームですが、取材の合間にも若い方々が訪れ、作品を手に取っていました。
初代興哉氏は、京都で陶芸修業を終えた1912(大正元)年に対厳堂を創業しました。創業まもなく厳島神社から御用命を賜り、「かわらけ(儀式や祭祀で使われる素焼きの土器)」を納め、現在に至ります。初代興哉氏は型制作に長け、鳥居や五重塔などの作品も手掛けました。
二代興哉氏は、ろくろによる香炉や茶器などの制作を得意とし、造形作品の制作も手掛けました。また、二代興哉氏の妻が、広島県の県木である紅葉の葉を貼り付けた「もみじ紋」を考案。本物の紅葉を使用するため、それぞれの葉の形や葉脈が異なり、自然の表情とともに広島らしさを感じさせる技法が完成しました。
三代興哉氏は大阪芸術大学工芸学科で陶芸を学びます。講師陣には、実用性にとらわれない前衛的な陶芸「オブジェ焼」という新たなジャンルを確立した走泥社のメンバーが揃っており、多くの刺激を受けました。その後は、祖父の足跡をたどるように京都へ向かい、京都市工業試験場や京都府立陶工職業訓練校で知識と技術を修得して家業に入りました。実用的な器から作品まで、職人と作家の両面を持つ三代興哉氏の基礎は、大阪と京都で育まれたのでしょう。
手回しのろくろだけでなく、機械ろくろを導入したり、つくるものによってガス窯・電気窯・灯油窯を使い分けたりしながら、日々作陶に真摯に向き合う三代が近年積極的に取り組んでいるのが磁器です。
「宮島御砂焼は陶器の産地として発展してきましたが、私が釉薬の試験をしているときに偶然、青白い落ち着いた色合いに出会いました。この青白色を美しく表現したいと思い、京都の試験場で磁器に触れた経験をきっかけに、磁器に取り組むようになったのです。窯のオリジナル商品をつくる一方で、飲食店の器や企業様の引き出物などの注文も多く、数量・価格・強度の点で磁器が優れている場合もあります」
さらに、造形の面においても磁器と陶器では仕上がりが異なります。
「磁器はエッジを効かせられるのです。そのシャープさによって白さがより際立ちます。機械ろくろを使うことで均一に仕上げられるのも利点です。逆に陶器では、土の本来のやわらかさを表現した作品を追求していきたいですね」
Wired Beansからの依頼は、まさに三代が磁器を極めたいと考えていた時期と重なりました。日常使いの製品としての性格が強いWired Beansのマグには、同一のものを安定的に生み出せる磁器のほうが適していたことも理由の一つでした。
そして装飾には、宮島御砂焼の象徴である「もみじ紋」を採用。白く透き通った磁器の生地に、天然の紅葉の葉脈を写し取った紋様が映えます。
「陶器と磁器では、紅葉の貼り方や彫り方が異なります。磁器だからこそできる、もみじ紋の表現を目指しました」
〒739-0411 広島県廿日市市宮島口1丁目3-39
0829-56-0027
世界遺産・厳島神社の御砂を粘土に練り込む伝統を持つ、宮島御砂焼。対厳堂の三代・山根興哉氏が手がけたマグは、広島の県木・紅葉の天然の葉脈を一つ一つ写し取った「もみじ紋」の自然な表情と、磁器のシャープでモダンな表情が融合した一品です。
今後の展望について
将来的に、Wired Beansのマグとどのようなコラボレーションをしていきたいかを伺いました。
「私は、“土を焼きたい”のです。土の表現、自然の表現です。広島はいろいろな種類の土が採取できます。扱いにくい土ですが、焼くとワクワクします。少し掘り進めるだけで、白い土や赤い土、『御本手(陶土に見られるピンク色の斑点模様)』が出やすい土など、さまざまな土の層が現れます。もっと土にこだわっていきたいですね」
同一デザインのマグを全国の産地でつくるWired Beansのプロジェクトにおいて、これまでは産地ごとの個性を表現する方法として釉薬の色や模様、絵付けが中心でした。そうした中、原料となる土を変えることによって産地らしさを表現するのは新しい発想です。
陶器と磁器の二刀流で、宮島御砂焼の可能性を広げていく対厳堂。今後の展開が楽しみです。