CRAFTSMAN:
Yuki Mori
CATEGORY:
Otani Yaki
POTTERY:
Umezatogama
LOCATION:
Tokushima, Naruto City
CRAFTSMAN:
Yuki Mori
CATEGORY:
Otani Yaki
POTTERY:
Umezatogama
LOCATION:
Tokushima, Naruto City
大谷焼の最大の特徴は、鉄分を含んだ土味と、素朴で力強い風合いにあります。2003年には経済産業省の伝統的工芸品に指定され、その要件の一つとして、使用する陶土は「萩原粘土」「讃岐粘土」「姫田粘土」またはこれらと同等の材質を有するもの、と定められています。
しかし、森さんは首をかしげます。
「“同等”って、どこまでが同等なんですかね」
大谷焼の出来栄えを左右する陶土についても、同等の解釈には幅があり、現在は「鉄分を含むこと」が一つの基準として運用されているそうです。
「大谷焼は、伝統的工芸品の指定を受けている産地のなかでも、おそらく最小規模。6軒でもなんとか成り立っているからか、使う土も、値段のつけ方も窯ごとにばらばらです。産地として、決して一枚岩とは言えません」
こうした率直な語り口も、森さんの魅力です。20代で『TVチャンピオン』(テレビ東京)の「陶芸王」で優勝し、30代で大谷焼で最年少の伝統工芸士に。40代を迎えた現在は、“異端児”として産地を牽引する存在となっています。
梅里窯の歴史は、曽祖父が本家の矢野陶苑で職人として働いていたことに始まります。祖父は「職人だけにはなるな。やるなら経営者になれ」と言われ続け、独立を果たします。当初は雑貨店を営み、その後は瓦業で財を成し、最終的に陶業へ本格参入して梅里窯を築きました。
2代目である母のあとを継いだ森さんは、当初は焼きものの道に進むつもりはなかったといいます。高校を卒業後、音楽の道を志して上京し、専門学校に進学。しかし、家族を持ったことを機に帰郷し、家業を継ぐ決意を固めます。京都府立陶工高等技術専門校で学び、理論と技術を体系的に習得しました。
転機となったのが、『TVチャンピオン』への出場です。ベテランの伝統工芸士を破って優勝という快挙は、大きな自信と同時に責任をもたらしました。
「注目されたことで、結果を出し続けなければならない、という意識が強くなりました。なぜ売れるのか、なぜ使いやすいのかを理屈で説明できなければならない。そのときから、感性と同じくらい分析も重視するようになりました」
当初はシャープで洗練された美を追求していましたが、展示会での反応を通じて方向転換を図ります。
「かっこいいものは評価されますが、実際に手に取られるのは、丸みがあって、優しさのあるうつわでした。だから、自分の表現も生活に寄り添う方向へ変えていこうと思ったんです」
以降、フォルムは直線から曲線へ。手にしたときの安心感、食卓に置いたときの親しみやすさを重視したデザインへと変化しました。
梅里窯では、土や釉薬、窯の使い分けにも工夫が凝らされています。現在は地元の土に信楽の土を配合し、用途に応じて強度や割れにくさを調整しています。
焼成は穴窯、電気窯、ガス窯を使い分けます。同じ釉薬でも焼成の環境によって発色や表情が大きく異なるため、それぞれの特性を理解しながら最適解を探ります。
特筆すべきは、「黄金焼」です。薪窯による天然の焼成で生まれる独特の景色は、灰が偶然に降りかかることで形成されます。人工的に灰を施すのではなく、自然の作用に委ねる手法は、大谷焼の原点ともいえる力強さを宿しています。
梅里窯の最大の特徴は、徹底した機能性の追求にあります。
代表的なコーヒーカップの開発には15年を費やしました。
持ちやすさ、軽さ、容量、口当たり、保温性、収納性といった要素を細かく検証し、試作と改良を重ねた結果、今の形状に行き着きました。
縁を厚く見せながら底を薄く削ることで軽量化を図るなど、視覚と構造を両立させる工夫も随所に見られます。鉢の裏に施された飛びかんなは、装飾であると同時に滑り止めとして機能し、高台の形状も洗いやすさを考慮しています。
森さんはこう語ります。
「きれいなうつわをつくることよりも、毎日使ってもらえることのほうが大事。洗うときに指が引っかからないか、重ねたときに場所を取りすぎないか。使い手が無意識に感じるストレスを減らすことこそ、ほんとうの意味での機能性だと思っています」
「生涯を添い遂げる」という理念に共感し、Wired beansとの協働が始まりました。
手づくりの風合いを残しつつ、型による量産性を確保するという課題に挑戦。割れても交換する「生涯補償」の制度を含めた仕組みも含めて“機能性”と捉え、大谷焼の土味と、藍の産地で知られる徳島らしい藍色を活かした製品が完成しました。

約240年の歴史を持つ徳島県「大谷焼」の梅里窯が手掛けたマグ。国の伝統的工芸品に指定されている大谷焼伝統の「灰茶(はいちゃ)」と、藍染めの染料“蒅(すくも)”を燃やした灰を配合したジャパンブルー「すくも藍」の2種を展開。日常に温もりを届ける機能的な一品です。
後継については、「継いでほしい」という思いを抱きながらも、無理強いはしない姿勢を貫いています。技術は惜しみなく伝える。しかし、最終的に選ぶのは本人。その背景には、家業を義務にしてしまうことへの危機感があります。
「陶芸は、好きでないと続きません。土に向き合い、失敗を繰り返し、十年単位で積み上げていく仕事です。だからこそ、自分の意志で選んでほしい。もし別の道に進んでも、それはそれでいいと思っています」
一方、産地の未来については、「小さいこと」を強みに変える必要があると語ります。
「伝統を守るというのは、昔のままを繰り返すことではないと思うんです。土や焼き方という“芯”は変えない。でも、売り方や伝え方、かたちの提案は時代に合わせて変わっていい。むしろ変わらなければ、生き残れない。小さい産地だからこそ身軽に動ける。その強みをどう生かすかが、これからの鍵になると思っています」