CRAFTMAN:
Mitsuharu Chosa
CATEGORY:
Satsuma Yaki
POTTERY:
Chosagama
LOCATION:
Kagoshima, Hioki City
CRAFTMAN:
Mitsuharu Chosa
CATEGORY:
Satsuma Yaki
POTTERY:
Chosagama
LOCATION:
Kagoshima, Hioki City
鹿児島県において、「帖佐」というのはちょっとしたブランドです。
まずは、地名、焼きものの名称として。姶良市に「古帖佐焼宇都窯跡」があります。武将の島津義弘は、茶の湯を大成させた茶人である千利休から指導を受けるほど、茶道に執心していました。関ヶ原の戦い(1600年)から帰還した翌年には、朝鮮から連れてきた陶工の金海に命じて、居館を構えていた帖佐の地に窯を築かせました。これが、現存する薩摩焼の最古の窯であり、「白薩摩」を焼いた御用窯の源流と伝えられる古帖佐焼です。
次に、鹿児島県にルーツを持つ名字として。島津氏の勇猛な家臣、帖佐宗光に代表されるように、帖佐は豪族の家系として知られているのです。
その帖佐の末裔の一人が、帖佐光晴さんです。
「図書館に行って、家のことを調べたことがあるんですよ。400年ほど前に美山(日置市)に来て、その前は出水市のほうにいたことまでしかわからんかった。もともとは、古帖佐焼があった地域の出身だと思うけど、大名たちは、家臣を同じ場所に置いておくと反乱を起こすと考えてバラバラにしたからね。今となってはわからない」
帖佐さんは25歳のとき、福島釉薬株式会社に入社します。同社は社名の通り、釉薬の製造・販売をはじめ、粘土、ろくろ、窯など、陶磁器に必要な原料から道具まですべてを取り扱っています。帖佐さんは地元の鹿児島を中心に、南九州を担当しました。窯元から注文を受けては配達に出かけ、話を聞いたり、窯の修繕を行ったりするうちに、自然と焼きものにくわしくなっていきました。いつしか、陶芸家たちの万屋のような存在になり、それは退職した現在も変わっていません。薩摩焼の名門「沈壽官窯」でも変わらず、「よっ!」と手を挙げて、友達の家のように入って行っては、「窯の調子を見てほしい」など、方々から相談を受けます。
「今もいっぱい電話がかかってくるよ。土や釉薬、窯なんかは、種類や配合、温度がちょっと変わるだけで焼き上がりが違ったりするからね。もちろん、答えられないこともあるんだけど、僕は誰にでも聞けるから。窯元同士だと聞きにくいこともあるでしょう。潤滑油みたいなもんですよ」
50歳で福島釉薬を辞めた帖佐さんの次の挑戦は、焼きものの業界を盛り上げることでした。
「作家が飯を食えなくて辞めたり、若い人が窯元に入っても技術を覚えたらすぐに出て行ったり、業界全体が元気をなくしているように感じていてね。それで、仲間たちと、陶芸教室のような、陶芸のベースとなる場所をつくろうと思ったんですよ。結局、その計画はうまくいかなかったんだけど、日置市にある『美山陶遊館』の陶芸教室で教え始めました」
陶器も磁器も熟知しており、土づくりや釉薬づくり、機械ろくろや型による成形、窯の焼成など何でもできる帖佐さんは約10年間、美山陶遊館で指導を行い、焼きものの楽しさを伝え続けました。教え子のなかには、焼きものを仕事に選んだ人も少なくないといいます。
60歳を過ぎて、帖佐さんは再び、新しい取り組みに協力することを決めました。一般社団法人福Cityが、閉校となった日置市の上市来中学校で開設した「Legacy神宮」です。こちらは、障害者が働きながら技術や知識を身につけられる就労継続支援B型事業所で、焼きものやキャンドルの製作、調理の教室があり、さらには、椎茸などの栽培を予定しています。そのなかの焼きものの先生として、帖佐さんに白羽の矢が立ったのです。利用者の障害の程度はさまざまで、仕事をしている人もいるので、自分のペースにあわせて来てもらっているそうです。
指導されていて、驚いたことがありました。
「仕事はものすごくていねいです。きれいに削れているので、『上手ね』って褒めたらずっと削り続けて薄くなってしまい……(笑)。加減が難しいんですね。あと、ハッとするほどすばらしい絵を描く子とかいますよ。構図を教えると、いい作品になりそうで楽しみです」
Wired Beansのマグも、旧上市来中学校の一室(元技術室)で、帖佐さんの手から生み出されています。なお、今回のコラボレーションを一つのきっかけに、数多くの作り手のアドバイザーであり続けた帖佐さんは、「帖佐窯」の窯主になりました。
焼きものの世界へ、多くの人は「もの」から入りますが、帖佐さんは「原料」や「道具」から入りました。他の作り手とはまったく異なる経歴の持ち主である帖佐さんが、これからどのような作品をつくっていくのか、楽しみです。
Wired Beansのマグは、薩摩焼の伝統である白薩摩の白、黒薩摩の黒を下地に、その上から釉薬をかけるバイカラー(1つのアイテムに2色を並べた配色のこと)が特徴です。顔料の配合と、窯の温度の微調整によって、ベストの色を探求するのは、帖佐さんならでは。また、上からかける釉薬が垂れ過ぎないようにずいぶん気を遣ったのだとか。
そのおかげで、薩摩焼の伝統と釉薬の達人の技が融合した、これまでにないマグカップが完成しました。
〒899-2311 鹿児島県日置市東市
来町養母5613番地1
(旧上市来中学校)

鹿児島県の伝統工芸・薩摩焼。本製品は、薩摩焼の地・帖佐に窯を構える帖佐窯の窯主・帖佐光晴氏が手掛けたマグです。40年以上にわたり陶土・釉薬・窯に携わり、数多くの作り手を支えてきた経験を生かし、薩摩焼の伝統を現代の暮らしに寄り添うかたちへと落とし込みました。白薩摩・黒薩摩を下地に釉薬を重ねたバイカラーが特徴で、うるみ釉、瑠璃釉、伊羅保釉、トルコ釉の4種を展開。
メッセージ
長年、焼きものの世界に携わり、作家や職人たちの相談に乗り、陶芸教室で指導を行ってきた帖佐さんに、作陶にあたって大切なことをお聞きしました。
「昔の人は一日中、ろくろに座り、湯呑みを300個ほど挽いていました。うまく形作れない人は、大きめにつくってから削ったりしますが、それだと削りかすがたくさん出るし、時間もかかってしまう。やっぱり、上達するには、たくさんつくるしかないんですよ。ただ、陶芸を志す若い子たちを見ていると、2つも3つも仕事を掛け持ちしているから、その時間をつくれないんだよね。そう考えると、そのなかで時間をつくって、陶芸をやってくれる人たちが育ってくれればそれでいいかな。それ以上は望まないし、望めないですね」
「体はきついし、もう年金をもらえる年だし、仕事を辞めたいよ」と笑う帖佐さんだが、これからも頼りにされたら、くわえタバコで軽バンに乗り込み、アドバイスに向かうことでしょう。